LESSON 07 / 07

改行・組版 約5分

読みやすい改行は、どう決まるのか

「折れていい場所」だけを増やす設計

「、」が行頭に来る、固有名詞が途中で切れる、英単語が変な場所で切れる。日本語の改行が崩れる場面と、それを防ぐ実務的な考え方を整理します。

100% / 全7レッスン

① まず結論

読みやすい改行は「どこでも自由に折れる」状態ではなく、「折れていい場所だけが増えている」状態のことです。CSSでなんとなく整えるのではなく、読み手が音読したときに息継ぎする場所と一致するように、折りたい場所と折りたくない場所を意識的に分けて設計します。

② たとえ話

文章を朗読する人をイメージするとわかりやすいです。

朗読者は、句読点や意味のかたまりで一呼吸置きます。読点「、」の前後で息継ぎするのは自然ですが、語の途中で息を切ると不自然に聞こえます。

改行も同じで、「、」の後・語句の境界・節のあいだなど、読み手の頭が一拍置く場所で折るのが自然です。「デジタルエクスペリエンスプラットフォー / ム」のように1文字だけ残ると、息継ぎとしても見た目としても不自然になります。

ただし Web では画面幅が読者の端末ごとに変わるので、改行を全部手で決めることはできません。「折れてよい場所」と「折れてほしくない場所」を HTML と CSS でブラウザに教えて、自動の折り返しを助ける、という考え方になります。

改行は息継ぎ。語のまんなかで息は止めない。

③ 図解で見る

やりがちな悪い改行と、読みやすい改行の対比。「/」は改行位置を示しています。

シーン悪い改行読みやすい改行
長いカタカナデジタルエクスペリエンスプラットフォー / ムを導入デジタルエクスペリエンス / プラットフォームを導入
読点の位置今日は晴れていて気持ちがいい / 、ピクニックに行こう今日は晴れていて気持ちがいい、 / ピクニックに行こう
助詞の孤立日本 / の技術力で世界を変える日本の技術力で / 世界を変える
英単語の途中切れ予算は extraord / inary なほど膨れ上がった予算は / extraordinary なほど膨れ上がった

ブラウザは自動で折り返しますが、上のような失敗は CSS と HTML の補助で減らせます。

④ よくある失敗

「、」「。」が行頭に来ている

句読点は、できるだけ前の行末に収めるのが日本語組版の基本です。まず lang="ja" を指定し、CJK の禁則処理に関わる line-break: strict を入れます。さらに対応ブラウザでは word-break: auto-phrase によって、文節の途中で折れにくくなる場合があります。ただしブラウザ差があるため、重要な見出しや固有名詞は CSS 任せにせず、wbr や nowrap で個別に補助します。

固有名詞・サービス名が途中で切れる

「文字選びの標本 / 室」のようにブランド名が割れると、認識のスピードが落ちます。短い固有名詞や重要なコピーは、span タグで囲って white-space: nowrap を当てると途中で折れにくくできます。ただし長すぎる語句に使うとはみ出しの原因になるため、適用範囲は短い名前に限定するのが安全です。

助詞だけが取り残される

「日本 / の技術」のように、「の」「は」「を」だけが先頭に残る改行は、読み手の頭で一拍引っかかります。対応ブラウザでは word-break: auto-phrase が文節境界での改行を助けてくれますが、すべての環境で同じように効くわけではないので、重要な見出しは wbr で折ってよい場所を明示しておくと安全です。

word-break: break-all で全部解決しようとする

長い文字列がはみ出すからといって、全体に word-break: break-all を当てると、英単語や固有名詞が不自然な場所で切れやすくなります。本文はまず word-break: normal を基本にし、必要に応じて line-break: strict、overflow-wrap: anywhere、wbr、nowrap を使い分ける方が安全です。

⑤ 実務ではこう判断する

「自動に任せる場所」と「手で整える場所」を分ける

本文・FAQ・ニュース一覧のような長い文章は、基本的にブラウザの自動改行に任せます。一方で、ファーストビューの見出し、ブランド名、料金表の見出し、CTAまわりの短いコピーは、改行位置が印象に直結するため個別に調整します。すべて同じ厳しさで整えるのではなく、文脈ごとに分けると作業量も品質も安定します。

折りたくない場所と折ってよい場所をHTMLで教える

途中で割りたくない短い固有名詞は、span タグで囲って white-space: nowrap を当てます。逆に「ここなら折れてもよい」という場所には wbr を入れます。wbr は br と違って、必要なときだけ改行候補になります。画面幅が足りているときは何も起きないので、長いカタカナ語や英数字の保険として使いやすいです。

CSSは「禁則」「見栄え」「緊急回避」に分けて考える

日本語の句読点まわりは line-break: strict。対応ブラウザで文節の途中折れを減らしたい場合は word-break: auto-phrase。どうしても長い URL や英数字がはみ出す場合は overflow-wrap: anywhere。さらに本文には text-wrap: pretty、短い見出しには text-wrap: balance を段階的に使うと、対応ブラウザでは不自然な折り返しを減らせます。balance は短いブロック向けで、長い本文全体には使いません。

英単語が混ざる本文では、必要に応じて lang="en" を付ける

長い英単語は、その部分を span で囲って lang="en" を指定し、:lang(en) { hyphens: auto } を当てると、対応ブラウザでは英語のルールに沿ってハイフン折りされます。ただし、ブランド名やサービス名はハイフンで割らず、nowrap や wbr で見た目を調整する方が自然な場合もあります。

⑥ 用語メモ

行頭禁則
行のあたまに来てはいけない約物のこと。「、」「。」「)」「」」など。日本語組版の基本ルール。
行末禁則
行のおしりに来てはいけない約物のこと。「(」「「」など、次に続くべき記号。
wbr タグ
「ここで折ってもよい」を意味するHTMLタグ。折る必要がなければ何も起きないので、長いカタカナや固有名詞の保険として使える。
text-wrap: balance
短い見出しの行幅を自動でならして読みやすくする CSS。短いブロック向けで、長い本文全体には使わない。対応ブラウザのみ効くプログレッシブな機能。
text-wrap: pretty
本文の改行をきれいに揃え、最後の行が1文字にならないように調整する CSS。
overflow-wrap
長い URL や英数字の連続など、通常の改行位置では収まらない文字列をどう折るかを指定する CSS。anywhere は、はみ出しを防ぐための保険として使える。
white-space: nowrap
指定した範囲内で改行させない CSS。短い固有名詞やブランド名を途中で割りたくないときに使う。ただし長い語句に使うとはみ出しの原因になる。

⑦ 学習後のチェック

  • 「、」「。」が行頭に来ていない
  • 固有名詞・サービス名が途中で切れていない
  • 助詞(の・は・を)だけが取り残されていない
  • 「自動に任せる場所」と「手で整える場所」を分けて設計している
  • 重要な見出しには nowrap や wbr で改行ヒントを入れている
  • word-break: break-all を雑に使っていない

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